厨房から業火の如く立ち昇る湯気を眺めながら、僕は後悔していた。

勢い余って、激辛汁なし担々麺を注文してしまったことを。

しかも大盛り。普通盛りならまだしも、大盛り。終わったかもしれない。頼んでから気付いたんだけど、どうやらこの担々麺は［悶絶級］らしい。店の壁にちっちゃい張り紙があって、そこに［悶絶級］って書いてあった。

おい！！それもっと早く教えてくれよ！俺が後先考えずに注文しちゃう前にさ、注文した時に「これ悶絶級だけど本当に大丈夫ですか？」とか嫌味ったらしく脅してくれよ！！知らずに注文しちゃったじゃないか！しかもなんだこの憎たらしい唐辛子のキャラクターは。なんかムカついてきた。誰も悪くないけど、なんなら俺が悪いんだけどね？！

でも、大丈夫。こういう時こそポジティブマインドだよね！！前向きに考えよう。

きっと、激辛担々麺は普通に美味しいはず。汗だくのおじさん達が作る汁なし担々麺は美味い、って相場は決まってるんだよ。

しかも蛭子能収もこの担々麺食べてるらしいからね！？なんか壁を眺めていたら蛭子さんのサイン色紙があった。蛭子さんが食べられるレベルならきっと大丈夫に決まってる。だって蛭子さんはそれを食べて今でもまだご健在だもんね。どんなに悶絶激辛でも死ぬことはないってことさ。

あ、でも待って。市原隼人と佐藤隆太も来てる。なんかヤバそう。平成のイケイケな俳優が食べてる激辛担々麺とかヤバそう。あ、急に不安になってきた。

あれこれと考えているうちに、来ちゃった。あ、来ちゃった。激辛担々麺。あ、もう手遅れだった。

お肉、ツナ、刻みネギ、パクチー。唐辛子！山椒！どーーーーん！！そして申し訳程度のレモンがちょこん。

赤いよ！？なんかすごい全体的に赤いよ！！いかにも辛い感じ。

怖いけどせっかくだから食べよう。汗だくのおじさん達に感謝していただきます。

一口目、僕は震える右手を左手で押さえながら麺を口に運んだ。

。。。。。。

…美味しかった！！うん、普通に美味しかった！！！てか言うほど辛くない！！俺が辛さに強いだけなのか分からないけど。シビレはあるね。山椒とパクチーがあるから、香草のシビレの感じはあるけど、辛すぎて唇がヒリヒリするような感じはなかったよ。

よかった。。悶絶することなく食べ終えました。

食べ終えた後、変わらず厨房からは湯気が立ち昇っていた。

今年の夏はアツい夏になりそうだ。